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プレス立憲民主号外 8月号 インターネット上の誹謗中傷への対策について

2020.08.10(月)/

ネット上の誹謗中傷対策について松尾あきひろさんに聞いてみました。
ーインターネット上、特にSNSにおける誹謗中傷が話題となっています。
 タレントで女子プロレスラーだった木村花さんが、SNS上で激しく誹謗されたことを理由として自ら命を絶つという悲しい事件も起こりました。自分がいつ被害者になるか、加害者になってしまうか分からないと、多くの人から不安の声も挙げられています。

ー松尾あきひろさんが実際に対応されたケースもあるのですか?
 私もこれまで弁護士として、インターネット上での誹謗中傷には数多く対応してきました。有名人に対するものや、企業に対するもの、一般の人に対するいじめなど内容様々です。
 ネット上の書き込みの対応は、まず発信者(書き込んだ人)を特定するところから始まります。特定の手続きは「プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)」に則って行うことが一般的です。プロバイダ責任制限法では、インターネット上の書き込みによって、自己の権利が侵害されている場合に、当該書き込みの削除や発信者情報の開示を、インターネットでサービスを提供している事業者である「プロバイダ」に対して請求することができます。

ー開示請求をするとスムーズに開示されるのですか?
 プロバイダは法律の専門家ではないので、指摘されている書き込みが法的に権利侵害をしているか判断することが困難です。安易に個人情報を開示することによって発信者から非難や責任追及されることを恐れ、削除や情報開示には消極的であることが一般的です。
 最終的には、裁判を通じてプロバイダに対して削除や開示を求めることになりますが、裁判には手間、時間、費用がかかるため、あきらめなければならないことも多くあります。
 一方、発信者情報が開示され、発信者が特定されて連絡をしてみると、「まさか特定されると思わなかった」「軽い気持ちでやった」と、発信者は平謝りするケースが多いです。皆、自分が悪いことをしていることは分かっているうえで、ネットの匿名性のためについ行ってしまっているのです。

ー問題の本質はどこにあるのでしょうか。
 この問題の本質は、誹謗中傷された被害者の権利と、書き込みをした者の表現の自由とを、どこでバランスをとるべきかという点にあります。一定の要件を満たした場合に削除や情報開示を認めるとして、その要件をどのように設定するかということになります。
 そして、今の法律では、「手続が煩雑過ぎること」がネックになっているのですから、「何を」開示するかの議論ではなく、「どうやって」開示するかについて、法改正の議論をしなければなりません。

ー法改正で問題を解決できますか?
 私は、弁護士から削除・情報開示の請求がされた場合には、プロバイダは原則として開示をする。開示をしたことによって、発信者から責任を問われない(責任が制限される)ように、プロバイダ責任制限法を改正することで問題が解決できると考えています。権利侵害がなされているかは、法律的な評価・判断を伴いますから、プロバイダ自身が是非を判断するよりも、弁護士が行う方が適切に行われることになります。
 もちろん、弁護士が開示請求の権限を濫用することによって、発信者の表現の自由が損なわれることにも配慮をする必要があります。しかし、現在でも弁護士は様々な情報を開示する権原を法律上付与されています。それらの開示請求権の濫用による混乱は非常に限定的で、概ね適正に運用されています。ですから、書き込みの削除や発信者情報の開示請求を弁護士に認めても、大きな不都合にはつながらないでしょう。

ー創造性を活かす社会へ
 ネット上での誹謗中傷を原因として尊い命が失われる悲劇を繰り返してはいけません。自由な発言が損なわれるのもいけません。そのバランスが大切なのです。
自由な発言も守り、人の創造性を活かす社会をつくるため、私は速やかな法改正に取り組んでいきます。
<了>
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